6月 142017
 

NIKKEI STYLE によると。

 「トリプルアクセルに声をかけるとしたら、どんな言葉をかけたいですか?」――。浅田真央選手の引退記者会見でNHKアナウンサーが発した質問に賛否両論が巻き起こったようだ。「賛」の立場の私から見ると、「否が優勢」というようにも見えた。

 「珍質問に場内騒然!」「おふざけ質問にネット炎上」「トンでも質問に真央困惑」「不謹慎」「場違い」などの反応が相次いだ。「質問者はこれ!」とアップするサイトも現れた。

 「トリプルアクセル」というスケートの技を「人扱い(擬人化)」した点や、「NHKだけどけっこうユニークな質問でしょ?」という空気をかぎ取り、抵抗感を覚えた人がけっこういらしたようだ。

 「アホな質問するなWWW」「酷すぎてワロタ」という直言の一方で「千代の富士引退の際に、『上手投げに何と言ってやりたいですか?』なんて、引退会見で聞きました?」といったコミカルな「素朴な疑問」も混じっていたが。

 「ここ一番」という場面でインタビューされる側も大変だが、する側も結構苦労する。一時期、こういう質問を繰り返し耳にした。

 その年にヒットした曲や歌手を表彰する番組などでグランプリに輝いた歌手へのインタビュー。

司会者 「今の喜び、どなたに伝えたいですか?」

受賞者 「貧しさと病と戦いながら、お前の時代が必ずやってくると応援しながら亡くなった祖母です(ザックリ言えばこんな中身)」

 「思わぬエピソード」の披露に受賞者はもちろん、場内もすすり泣き。昭和の時代にはよくあった。

 次第にこのやり取りがパロディー化され、21世紀に入ると聞かなくなった。そこへ、今回の「~トリプルアクセルに声をかけるとしたら、どんな言葉をかけたいですか?」が装いも新たにカムバック。「わあ、懐かしい!」と私同様、オールド世代は感じたのではないか。
■珍質問が呼び込んだ、真央選手の天才的な答え
 しかも子細に聞けば質問の中身に「ひねり」が加わっていた。アナウンサーは質問の中身の一部を「進化」させていた。「誰に言葉をかけたいか?」という「人物」ではなく、「トリプルアクセル」という「技=無生物」への「声かけ」という「奇手」に打って出たのだ。「同じじゃないか?!」と言いたくなる気持ちはわかるが、そうともいえない。

 真央さんは選手としての全盛期に愛するお母様を亡くしている。「誰に伝えたい?」と問われ、お母様のことが出てくれば「俺、泣いちゃうかもしれないなあ」と真央ファンの私が勝手におそれていたところへ「トリプルアクセルに言葉をかける」と聞き、私はホッとしたのだ。

 さらに、アナウンサーの「奇手」が、真央選手の機知に富んだ天才的な答えを引き出した。

真央 「うーん、難しい(笑い)」

 一瞬の戸惑いに続いた言葉が素晴らしかった。

真央 「『なんでもっと簡単に飛ばせてくれなかったの?』って感じです」

 この会見を一緒に見た、スポーツ取材体験の多い友人がこんなふうに言った。

「彼女が絶不調の時期、一心同体で戦う佐藤信夫コーチが『彼女にとって恋人みたいなトリプルアクセルを封印させるのは難しい』と口にしていた。もはや真央ちゃんにとってトリプルアクセルは、自分の評価を高める技のひとつではなかった。コーチの言う恋人でもあり、励まし合い、ときには愚痴を受け止めてくれる唯一無二の親友以上の存在だったかもね」

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